多汗症
多汗症

多汗症(たかんしょう)とは、体温調節に必要な範囲を超えて、汗が過剰に分泌される状態を指します。「手の汗で書類やスマートフォンが濡れてしまう」「ワキ汗が服に染み出す」「足の裏が常に湿って不快」といった悩みを抱える方は少なくありません。 汗は誰にでもかく生理的なものですが、日常生活や社会生活に支障をきたすほどの発汗がある場合、多汗症という治療可能な皮膚の疾患と考えられます。 多汗症では、主にエクリン汗腺から分泌される無色透明の汗が過剰になります。そのため、衣類の汗ジミ、不快感、精神的ストレスなどが問題となり、学校生活や仕事、人とのコミュニケーションに影響することもあります。他人には相談しづらい悩みですが、皮膚科で適切な治療を受けることで改善が期待できます。
多汗症は、汗を分泌するエクリン汗腺自体に異常があるというよりも、汗を調節する自律神経(交感神経)の働きが過剰になることが主な原因とされています。精神的な緊張やストレス、環境の変化などをきっかけに、必要以上に汗が分泌されることがあります。 なお、腋臭症(ワキガ)はアポクリン汗腺由来の汗が細菌によって分解され、強いにおいを生じる疾患であり、「汗の量」が主な問題となる多汗症とは異なります。多汗症では、においよりも汗の量や汗ジミ、不快感が主な悩みとなります。
他の病気や薬剤が原因となって起こる多汗症です。 例として、甲状腺機能亢進症、糖尿病、更年期障害、感染症、薬剤の副作用などが挙げられます。原因となる疾患の治療が優先されるため、正確な診断が重要です。
多汗症では、季節や気温に関係なく強い発汗がみられます。特に腋窩多汗症では衣類の汗ジミが目立ち、人前で緊張することでさらに汗が増えるという悪循環に陥ることがあります。着替えや制汗剤が欠かせなくなり、生活の質(QOL)が大きく低下するケースも少なくありません。
これらに当てはまる場合、多汗症の可能性があります。
診断は主に問診と視診により行います。発汗の部位、程度、生活への影響、発症時期などを確認し、必要に応じて他疾患の除外を行います。診察はプライバシーに十分配慮して行いますのでご安心ください。
汗腺の出口を一時的に閉塞し、発汗を抑える薬です。手のひら、ワキ、足の裏、頭部、顔面など幅広い部位に使用できます。刺激感が出ることがあるため、使用方法を工夫しながら継続します。
交感神経の作用を抑えることで発汗を減らす新しい外用薬です。ワキにはエクロックゲルやラピフォートワイプ、手のひらにはアポハイドローションが保険適用で処方できます。1日1回の使用で効果が期待でき、日常生活に取り入れやすい治療です。
抗コリン作用をもつ内服薬(プロバンサイン)を用いることで全身の発汗を抑えることができます。ただし、口渇や便秘などの副作用が出ることがあるため、症状や生活スタイルを考慮しながら慎重に使用します。
ワキの多汗症の症状が強い場合や外用療法で十分な効果が得られない場合に、ボツリヌス毒素注射(ボトックス)を考慮します。条件を満たせば保険適用となります。注射後2〜7日で効果が発現し、4〜9ヶ月の間効果が持続します。神経筋接合部疾患、妊娠・授乳中、ボツリヌス毒素過敏症の方には投与できません。
手のひら、足の裏の多汗症で、外用療法で十分な効果が得られない場合に考慮します。クリニックで、手のひらまたは足の裏を水道水を入れた水槽に浸し、15分〜20分ほど弱い電気を流します。電流により、汗管の一過性閉塞、エクリン汗腺機能の抑制の効果があると考えられています。導入期は週1〜2回行い、効果が安定してきたら1〜2週に1回のペースで通院します。効果が出るまでに5〜10回程度必要で、中止すると数週で再発することが多いです。心臓ペースメーカーの入っている方、金属の入っている方、妊娠中の方は使用できません。
多汗症は見た目の問題だけでなく、精神的な負担や社会生活への影響が大きい疾患です。「体質だから仕方ない」と我慢する必要はありません。適切な診断と治療によって、多くの方が症状の改善を実感されています。 当院では、多汗症診療に精通した医師が一人ひとりの症状に合わせた治療をご提案しています。汗のお悩みでお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。